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生きる役割

Fさん(90歳女性)は心疾患の入院治療を境に、認知症の進行とうつ症状が顕著となり、退院後も意欲・食欲・筋力の 低下が見受けられたため、あっぷるの「庭」をご利用されることになりました。

 利用初日、緊張された様子でしたが、他の方との交流や昼食の餃子作りを大変喜ばれ、うつ症状や発言等は見受けられずにご利用を続けられました。ご自身でも以前の自分がウソのようだと仰り、積極的に通っていただきました。  ですが、ご自宅でのFさんは時々安定剤を服用されたりと不安定な様子も見受けられていたそうです。

 そんなFさんとの送迎車両内での会話です。

Fさんより

「毎日仏壇の前で旦那に『早くお迎えに来てちょうだい』ってお願いしているんだ。」

「長生きし過ぎちゃったから、早くしにたい。」

表情は明るく話をされておりましたが、こういう場面での返答として、

話を聞き流す…。ダメだよと諭す…。きっと色々な答えがあり正解はないと思われますが、聞き流してしまうことは無視をしてしまう事。ダメという否定的な言葉を使う事も認知症の方への対応としては不適切。ですので、短い乗車時間の中で私は

「長生きする中に役目があるのかも知れないですね。」

と声を掛けました。するとFさんは

「役目なんてない。何もできないんだから。」

と苦笑いをされました。そんなFさんに対して私は、

「孫ちゃんから『ばあちゃん』って呼ばれるのも役目ではないですか?」と尋ねると、そこから『旦那さんのお迎え』の話は消失し、大好きなお孫さんとのご自宅での様子や妖怪ウォッチが好きであること等を話されご自宅へ到着しました。

 お送りしたあとで、自分の選んだ言葉がFさんの気持ちを否定してしまったのではないか、お孫さんの話にすり替えてしまった為に真意を遮っていたかも知れないと考えました。正解はないと前述しましたが、この一連の会話を通じて、普段利用者様の言葉に対しての傾聴や共感ができているか、言葉で返答することだけがケアなのかを改めて考える時間を頂きました。

 よくお聞きする言葉であっても利用者様お一人お一人それぞれに対して心に寄り添う姿勢を心がけていきたいと感じた出来事でした。

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