私が介護士を志して間もない頃の話です。 Uさんは99歳の男性で車いすを自分で動かして散歩するのが日課でした。
ご高齢のためか、認知症のためか、 お一人で話をされていることが多く耳も遠いため会話もほとんど成立しませんでした。
ある日、耳元で『お手洗いに行きましょう』の声かけに頷かれたためおトイレにご案内させて頂きました。
履いていたももひきが汚れてしまったため交換しようとすると、 先輩職員から『その位なら交換しなくてもいいよ』との言葉があった直後でした。
Uさんから、『ちゃあんと、分かっているよ』先輩職員はたまたまのひとり言だと捉えたようです。 ですが、私はそれまでUさんを決めつけてしまっていた自分が恥ずかしくUさんに申し訳なく思いました。
それがひとり言であったのか本当に分かっていらっしゃるのか確かめようがありませんが、これから認知症ケアを実践していく上での『尊厳』どんな方に接する際にも自分の胸の中に『ちゃあんと』持ち続けていたいと思いました。